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京大カードはデジタル時代にこそ必要ではないかと思うのです

京大式カード

勉強に使うカードというと、英単語などを覚えるために使った、単語カードを思い出す人が多いと思います。

暗記のためのカードではなく、知的生産のためのカードとしてつくられたのが、京大式カードとか京大型カード、あるいは単に京大カードとかいわれるB6サイズ横型のカードです。(蛇足ながら、クレジットカードの「京都大学カード」は全くの別物です。)

岩波新書の『知的生産の技術』という梅棹忠夫氏の著書で、このカードの仕様や使い方が書かれています。

はじめはカードを自作していました

高校生のときにこの本を読んで、早速、自分でも使ってみたいと思いました。しかし、身近な文房具店では売っていなかったので、ちょっと家から離れた大きな文房具店で探してみました。そこに売ってはいたのですが、自分の小遣いからすると値段が高かったので、自分でつくることにしました。

スーパーマーケットで売っているB4サイズの画用紙を、写真の印画紙を切るためのカッターで切ってB6サイズにし、そこにゴム版で罫線が印刷できるようにスタンプのようなものをつくりました。今思うと下手なものでしたが、何とか使えるものができました。

また、罫線がなくても、無地の状態で十分に使えるものなので、安い画用紙が入手できるなら自分でB6サイズに切っただけでもOKです。私は、罫線付きのものと無地のものを併用していました。

京大カードの効用

デジタル時代となり、手帳代わりにスマホやタブレットを使う人も多い時代です。大半の人がシステム手帳を使っている時代もありましたが、最近は減ったような気もします。記者会見の席でも、デジタル機器でキーボードを打ちながらメモをとっている記者が多数派に見えます。

デジタルのファイルで出稿しないといけないような仕事なら、手書きのメモをあとで入力し直すよりは、直接入力した方が効率的です。

しかし、そのような必要がない場合では、手書きの効用をあえて利用することもあってよいと思います。

手書きの効用についてはいろいろといわれています。脳の活性化とか記憶の定着がよくなるなどです。学生時代の勉強のときには、私は書いて覚えるタイプでしたので、手で文字を書いたり、図を描いたりすることは今でも大切にしています。それに加えて、何かアイデアが思いついたときにすぐに記録できることも大きいと思っています。

デジタルネイティブ世代の人は、また、違う見方をされるかもしれません。あるオヤジの参考意見としていただければと思います。

また、手書きのメモをとるだけなら、どんな紙切れでもよいと思うのですが、カードを使うことに意味があります。

カードはサイズが統一されていますから、持ち歩くときは、輪ゴムでまとめるなりパンチ穴をあけてリングやバインダーにとじるなりしやすいです。

ルーズリーフのように薄い紙ではなくそれなりの厚みがありますし、サイズも小さいですから、並べ替えもしやすいです。いろいろと順番を変えたり、テーマごとに集めたりできます。

検索や並べ替えはパソコンの方がはるかに高速でできますが、パソコンではしにくいような検索や並べ替えがカードならできます。たとえば、自分自身にしかできない連想でカードを取捨選択し、残ったカードを整理しながら、考えをまとめるようなことができます。

そこらの紙切れに書いたメモでも、後でカードに貼っておけば、カードに書いたのと同様の使い方もできます。

カードは、机や床の上にたくさんの枚数を並べることもできます。KJ法のような使い方もできます。ただし、B6サイズのカードはKJ法で使うには大きすぎるという問題はありますが。

※KJ法とは、文化人類学者の川喜田二郎氏(1920~2009)が考案したアイデアやデータを関連づけてまとめるための方法です。アイデアやデータを小さなカードに1枚につき1項目を書き、これを関連づけていくものです。複数の人間でアイデアを出し合いながら、それをとりまとめていく際に、たいへん有効だと筆者も納得した経験(会社の研修でした)があります。詳しい方法は調べてみてください。川喜多氏は、京都帝国大学時代に梅棹氏と探険をともにしたこともあった人です。

パソコンなどの画面上ではできない使い方ができるということは、カードの強みです。

特に、京大式カードはB6版という大きめのサイズで、書き込もうと思えば、それなりの情報量が1枚に収められるところが便利です。書籍や論文からの引用を書き込むことも、ちょっとした図も収められます。何でも自分の関心のあることがらを自由に書き込むこともできますし、勉強していることがらを書き込むこともできます。自由な使い方ができるのがこのカードの特徴です。いずれにしても、1枚につき1つのテーマを書くという原則は守った方が、後々整理をするときに便利です。

※KJ法のような考えを整理する方法には、ほかにマインド・マップがあります。これについては、私は勉強不足で評価できません。しかし、マインド・マップはパソコンソフトが無料のものから有料のものまで複数あります。これを使うとパソコン上でもうまくアイデアの整理などができるのかもしれません。

京大式カードの使い方

かつて私が卒業論文を書いたときは、ワープロ専用機もパソコンもなかった時代です。それでも、京大カードを使うことで、作業がずいぶん楽になったことを記憶しています。

まずは、参考文献の必要箇所の書き写しや、自分が主張したいことなどをカードに書き込みました。まだ、論文全体がどのような構成になるかという構想ができていないときの段階です。

とにかく、論文に書きたいこと、引用したいことなどカードに書いていきました。

そういうカードが貯まってくると、これを整理します。章立てやその中にどのような節を置くかという構想は、この整理の中で考えていきました。論文の構成の仕方についてのアイデアも、カードに書いておくようにしました。

400字詰め原稿用紙50枚程度の論文で、凡庸な論文に過ぎませんでしたが、京大カードのおかげで、それなりの体裁の整った論文を、それほど苦しまずに書き上げることができたと思います。

論文を書く必要がある人はそれほど多くはないかもしれません。それでも、職場で何らかの報告書を書く必要があったり、会議のレジュメをつくったり、プレゼンテーションをしなければならない人は多いと思います。

そういうときにも、京大カードは使えると思います。資料作成の直前に苦しむよりも、日頃から使えそうな情報をカードに書き込んでおけばよいのです。

手書きのものをあとで入力するのは手間だと思われるなら、カードに書いたことを、暇を見てパソコンなどに入力しておくという手もあります。あるいは、カードを作るときに、手書きではなく、パソコンのワープロソフトなどにB6サイズのフォーマットで入力して、それをカードに印字しておく手もあります。これなら、前日に残業する必要もないほど資料作成が早くすむかもしれません。

このごろは、読書をしているときにカードに書き込んだり、仕事で必要なことをカードにメモしたり、このブログに書きたいことなどをカードに書き込んでいます。ルーズリーフやバイブルサイズのシステム手帳を使うこともありますが、それらもあとでカードに貼ったりしています。書き込むときのフォーマットに関係なく、京大カードで整理しておくと、あとでの活用がしやすくなります。

パソコンやスマホなどのデジタル機器を使う機会の方が多い時代になりました。しかし、手書きをしながら考えることや、カードを並べ替えることでの新しい発見など、デジタル機器とは違う効用がカードにはあるかもしれません。

基本的には、自分の使いたいように使えばよいという、自由なツールであると思います。

使われたことがない方なら、先の『知的生産の技術』を読んで、梅棹忠夫氏の使い方を学んでいただければと思います。

また、京大カードではないですが、カードを使ってどのように論文や本を書いたかについて書かれている、渡部昇一氏の『知的生活の方法』(講談社現代新書)も参考になるでしょう。

カードの入手法

既製品を買う

私は、今はだいたい既製品を買っています。今使っているのは、LIFE(ライフ)というメーカーの「情報カード 白 B6 J850」という商品です。これは、以前よく利用した文房具店で売られていて、400円を切る価格だったので買っていました。この商品はamazonでも販売されています。しかし、販売価格は500円ほどになっています。


もう少し安い商品では、コレクトというメーカーの「情報カード B6 京大式 C-602」なら、300円台で売られています。ただし、プライム会員でない方は別途送料が350円がかかりますので、6個のまとめ買いで送料無料にするとよいかと思います。(ただし販売者がamazonのものを選ばないといけません)



上記のライフとコレクトのカードは罫線の幅が9.5ミリですが、もっと狭い方がよいという方は、コクヨの「情報カード 横罫 B6横 2穴 100枚 シカ-13」という商品があります。ただし、パンチ穴が2つあいています。これを便利と見るか不便と見るかは意見が分かれるところです。


自作する

今なら、パソコン+プリンターで罫線をきれいに印刷できます。また、手書きではなく、パソコンに入力したものをプリンターで印字するのが前提という場合は、罫線を印刷する必要もないでしょう。

ただ、紙とインク(トナー)のコストや裁断や印刷の手間を考えると、既製品と比較してみるのもよいかもしれません。

たとえば、既製品の京大式カードと同じくらいの厚さのケント紙なら、B4サイズで100枚のものが1700円ほどで売られています。B6サイズに裁断して400枚になりますので、無地で使うなら1枚40円ほどになります。

はじめから、B6版のものもあります。100枚で500円ほど(送料別)で販売されています。

まとめ

私自身、20代から長年パソコンなどのデジタル機器にどっぷりつかってきました。いつのころからかカードを使わないようになり、それからかなりの年月が経ったように思います。カードよりもアイデア・プロセッサをいかにうまく使うかというようなことにエネルギーを注いでいたのです。

しかし、このごろは液晶画面に向かってキーボードを打っていることに飽きてきた面もあります。ペンなり鉛筆なりをもって、紙に文字を刻むという昔ながらの動作が、むしろ新鮮に感じるほどです。すでに私はデジタル機器は手放せない人間になってしまったと思います。しかし、紙の本を読んだり、紙にペンで書き込むことで、長年忘れていた初心を思い出したようにも感じています。

新聞や雑誌、書籍などの紙の活字媒体を読んでいるときや、テレビやラジオを視聴しているときに、これは役に立つ情報だと思ったら、スマホで撮影したり録音したりという方も多いでしょう。

紙に印刷された活字は手書きで写すよりも写真に撮った方が早くて簡単です。スマホ用のスキャナアプリを使えば、OCRでテキストファイルやPDFも簡単に作れます。

本当に便利になり、私たちは大量の情報を入手できるようになりました。ただ、情報は吟味され、取捨選択されないと活用できません。自分の手元に大量の情報を所有できても、それがうまく利用されないと、それらの情報はなかったものと同じです。情報は私たちの脳によって処理されてはじめて生きるのですが、個人の頭の情報処理能力は有限なものです。

スマホやパソコンに大量のデータを保存できても、そのデータを活用する処理能力は、人間個人がもつ能力を超えられないということです。

京大カードのように、手に触れて、机や床に並べて、眼で読むことができる範囲のことが、人間の情報処理能力の限界なのではないかと思います。

そうすると、デジタル時代の私たちがカードを活用する意義は確かに存在すると思えるのです。たとえば、次のような例がありうるのではないでしょうか。

1 大量にパソコンやスマホに保存した情報の中から、これは自分にとって重要だと思うものをカードに書き込むかプリントアウトする。(薄い紙にプリントアウトしたものは折りたたんでカードに貼っておく)

2 日々それを蓄積していく

3 ある程度たまったところで、テーマごとに、たとえば輪ゴムで縛るなどしてカードをまとめておく。

4 ある情報に必要性が生じたら、すでに分類されたカードのかたまりを取り出して、それらを机いっぱいに並べ、全体を見渡しながら、位置を並べ変えたり、関連するものを近くにもってきたり、不要なカードははずしたりして整理していく。

5 整理されたカード群から、自分のテーマの答えとなる論理的な道筋を試行錯誤しながら探し出して、結論を導き出す。

上記は抽象的ないい方で恐縮ですが、情報を活用する一つの方法としてありうるのではないかと思います。

情報が大量に流されている社会にあって、それを受け取る私たちが情報に振り回されるのではなく、積極的に情報を生かすための一つの方法として、京大カードの活用がありうるのではないかと思うのです。

昔使っていた方も、まだ使ったことがない方も、試してみてはいかがでしょうか。

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