いずれ世の中の本はすべて電子書籍になるんでしょうね

紙の本しかなかった時代に育った人間としては、本といえばまずは紙の本を頭に描きます。

50年後、100年後に紙の本がなくなってしまうことになったと仮定して、どんな風景になるのか想像してみたいと思います。

もちろん、紙の本がなくなることは、電子書籍が新たに出版される書物の100%になることを意味しています。

子どもたちは、幼い頃から電子絵本に親しんでいます。お母さんが読んであげなくても、自動で音声がでて、ページもめくってくれます。

学校に入ると、教科書も副読本も辞書もすべて電子版です。子どもたちは、ランドセルにタブレット端末を一つ入れれば、ほかは物差しや三角定規、ハーモニカや縦笛を入れるくらいです。それでもまだ、筆箱は必要でしょうか。

テストの問題もすべてタブレットの画面上に現れ、解答もタブレットに電子ペンで書き込みます。採点は、サーバーに保存された子どもたちの解答データを、人工知能が自動的に採点します。小テストも定期テストも入試もすべてタブレットで行われます。

学校から保護者への連絡も、ペーパーレス化されます。学校にリソグラフのような印刷機は必要なくなります。印刷機の市場は今にくらべると大幅に縮小するでしょう。

子どもたちは、紙の本のない教育を受けてきたので、もはや本という概念すらなくなってしまうかもしれません。つまり、幼少期から、電子的なファイルというデータとしてしか、今でいう本に該当するものに触れていないのですから、電子的なファイルも本も、両者の違いはないのです。

世の中からは、本棚がなくなります。本棚が置かれている今のような書店もなくなります。書店員さんたちは重たい本の束を運んだり、本棚を整理したりという体力のいる仕事から解放されます。

大規模な書店では、今のような広いスペースは必要なくなります。ネット上で電子書籍をダウンロードするだけで本が買えるのですから。書店の役割は、時間つぶしや、休憩や、待ち合わせ場所として存在意義が認められるでしょう。

書店は、椅子と端末を並べて、コーヒーでも飲みながら、バーチャル本棚を見るというだけの場所になります。書店員は、バーチャル本棚にどのような本を並べるかで腕を競うことになるでしょう。

お客さんは、実店舗でもECサイトでも、バーチャル本棚で本を探し、目次や本文の一部を試し読みします。amazonのようなレビューも参照します。それで、興味が持てそうなら電子マネーで決済し、購入します。

すでに紙の本が出版されなくなって久しいので、古書店に並べられている本は、何十年以前の本しかありません。古文書も含めて著作権の切れている本は、すべて電子化されていますので、歴史や文学の研究者はそれを用います。

しかし、旧家の蔵に眠ったままの古文書のように、まだ電子化されていないものは、高値で取引されます。貴重文献は、電子化されてもそれなりの価格で販売されることになるでしょう。

古文書や古書の現物は骨董品と同じような扱いをされることになります。

古書店、古本屋とよばれる業種は、古文書や古書の影印を電子化し、それを販売するような業務で成り立つようになります。しかしこの場合、国会図書館などが公開していないものでないと、有料で販売することが難しいかもしれません。

図書館も、市民向けの小規模なところでは、電子書籍だけになります。図書館内でタブレットで読むか、貸し出しについては、今の貸出期間と同様の冊数と日数だけ、図書館から貸されたタブレットで読めるようになるでしょう。出版社が認めていれば、個人のタブレットやパソコンにダウンロードして読めるかもしれません。

紙の本を大量に所蔵している図書館は、もうこれ以上保管場所を確保する必要もなくなり、そのために本を廃棄する必要もなくなります。本の整理のための人員も削減でき、図書館の運営費用も、今よりも大幅に削減できるでしょう。

新聞も紙での発行はなくなり、今の「新聞紙」という概念はなくなります。ただ、ことばとしてのみ、「本紙記者」などは残るでしょう。新聞販売店は廃業を余儀なくされ、新聞配達もなくなります。折り込みチラシがなくなりますので、スーパーマーケットの安売り情報は、ネットで調べることになります。紙のチラシは、狭い一定地域限定でのみ、配布される程度になるかもしれません。

本や雑誌・新聞が電子版のみになったら、文化のあり方や街の風景の一部が変わることになります。本当にそんな時代が来るのでしょうか。個人的には、紙の本は残り続けて欲しいと願っています。

しかし、電子書籍には、紙の本と比べて多くのメリットがあります。

紙の本の輸送コスト、トラックからの排気ガス、倉庫での保管コスト、売れ残った本の廃棄コストなど、電子書籍はそのようなマイナス面がほとんどありません。紙の原料となる森林資源の保全、温暖化対策にも電子書籍は貢献できます。

紙の本は、書棚に並べているだけでも劣化が進みます。手にとって読むだけでも、汚れたり、表紙や本文が傷んだりします。本棚に置いておくだけでも、変色が進みます。それに対して、電子書籍には、物としての劣化がありません。

紙の本は、古本としてリユースされます。消費者としては、安い価格で古本が買えることはメリットです。しかし、著者や出版社にとって、古本が売れても利益になりません。出版社サイドとしては、古本業界は邪魔な存在だといえます。ある本を読みたい人は、常にその新本を買うしかないような状態が、電子書籍によってできあがります。これは、出版社にとって、大きなメリットです。

このような多くのメリットから、教科書や副読本が電子書籍のみになり、学校の図書室もすべて電子書籍のみになったならば、紙の本を知らない世代が増えていくことになります。

そうなると、紙の本は売れなくなり、出版社も次第に出版部数を減らしていくことになるでしょう。そして、最後はなくなってしまうのではと思います。

それでも、詩集や画集・写真集などの分野では、本自体が芸術品としての意味を持ちうる場合、依然として紙の本の存在意義は残り、一定の需要があるように思います。

私は、紙の本はなくならないでほしいと願っていますが、いずれは電子書籍が紙の書籍を駆逐するのだと思わざるを得ません。しかし、その時代には自分はもういないでしょうから、他人事(ひとごと)でしかないことになります。

自分が生きている間は、紙の本のにおいや手触りを楽しみながら、読書ができる仕合わせをかみしめたいと思っています。

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