// // 『ディープ・パープルⅢ』を久々に聴いてみました

『ディープ・パープルⅢ』を久々に聴いてみました

『ディープ・パープルⅢ』(原題は『Deep Purple』で「Ⅲ」というのはありません)というディープ・パープルのアルバムを聴きました。

知ってる人はみんな知ってることなんですが、ディープ・パープルといえば、レッド・ツェッペリンと並ぶイギリスの代表的なハード・ロック・バンドです。

ディープ・パープルは、第1期から第4期(1968年~1976年)までのわずかの期間の活動で解散し、後に再結成(1984年~)されました。ハード・ロック・バンドとして人気を博したのは第2期以降ということになります。

高校生の頃、文化祭ではあちらこちらの教室で、ディープ・パープルの「ハイウェイ・スター」が流れていたのを思い出します。この曲は『マシン・ヘッド』というアルバムの中に収められています。

中学生のときに日本盤よりも安いアメリカ盤のLPレコードを買い、何年間もすり切れるほど聴きました。このアルバムでは、「ハイウェイ・スター」とともに「スモーク・オン・ザ・ウォーター」も名作です。また、「レイジー」は、オルガンとギターの速いテンポのかけ合いがとてもかっこいいナンバーで、これまた名曲です。

第2期のディープ・パープルは、なんといっても、イアン・ギランのボーカル、ジョン・ロードのキーボード、リッチー・ブラックモアのギターのそれぞれのソロがバンドの個性を際立たせていました。特にリッチーはルックスも抜群でしたし、女性のファンも多かったですね。もちろん、バンドのリズムを支える、イアン・ペイスのドラムと、ロジャー・グローヴァーのベースも冴えています。実によくまとまったバンドだったといえますね。商業的に大成功したのも納得できます。

私は、イアン・ギランの鋭い高音が特徴のボーカルと、リッチーの速弾きのギターも大好きでしたが、ジョン・ロードのキーボードが特に好きでした。

ジョン・ロードは、クラシック音楽を愛する人で、“ロックとクラシックの融合”をめざした作品も多々あります。ヨーロッパ人にとってクラシックは、身近な音楽として血肉のようなものでしょう。まして、ジョン・ロードは子どもの頃からピアノを習い、クラシック・ピアニストをめざしていたというからなおさらです。

なお、クラシックの影響は、リッチー・ブラックモアにもあります。彼もはじめはクラシック・ギターを学びました。第2期の活動はリッチーが中心になりますが、彼はジョン・ロードとはまた別の仕方でクラシック音楽をロックに導入したと私は思っています。


ところで、今回聴いた『ディープ・パープルⅢ』は1969年に録音された第1期の3枚目のアルバムです。ボーカルはロッド・エヴァンスで、イアン・ギランとは違って、低音が魅力の渋いボーカリストといえるでしょう。第1期の曲はハード・ロックよりもプログレッシブ・ロックに近い印象です。特に、ジョン・ロードのクラシック指向が強く出ています。

それがはっきり出ているのが、アルバムの最後に置かれた曲、「April(四月の協奏曲)」は、このアルバムでもっとも長い12分という大作です。ジョンのハモンド・オルガンとリッチーのアコースティック・ギターで始まり、エレクトリック・ギターも加わりながら、短調の曲として展開していきます。4分を過ぎてたころに、管弦楽へと変わります。オーケストラの響きというよりは室内楽的な小編成の響きです。この作曲はジョン・ロードが行ったということです。邦題で「四月の協奏曲」とされているのも、この管弦楽があるからでしょう。管弦楽が終わると、ロッド・エヴァンスのボーカルとともにロックの曲になります。「Ah………/April is a cruel time」という歌詞から始まります。

「四月は残酷な季節だ(April is a cruel time)」という詞は、イギリスの詩人T.S.エリオットの『荒れ地』の冒頭の「死者の埋葬」にある「April is the cruellest month」(「四月は残酷極まる月だ」西脇順三郎訳) を踏まえていることは明らかでしょう。

ディープ・パープル自身による曲目解説によると、

4月は美しいと同時に、我々にとっては悲しい月なのだが、この曲が全体的に”4月”を伝えることに成功していれば幸いだ。

(1996年ワーナー・ミュージック・ジャパン発売のCD所収の酒井康氏の解説より)

私は冬が好きなので、3月になり春の気配が感じられるようになると憂鬱になります。若い頃は、全く逆だったのですが。

それはともかく、この曲は、私には実に味わい深い曲です。確かに「4月」が伝わってくるように感じます。これは趣味の問題なので好き嫌いがあるかもしれませんが。

他の曲はいずれも、1960年代後半のロック・サウンドです。あるいは、60年代から70年代への過渡期に当たるサウンドといえるかもしれません。新しい音楽を模索し、多くのバンドがそれぞれの個性ある作品を生み出した時代です。

1960年代後半から1970年代前半、元号でいうと昭和40年代です。この時代のロックは、今もなお新鮮な響きに満ちています。この『ディープ・パープルⅢ』もそんな1枚といえると思います。

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