高田渡さんの「生活の柄」に癒されます

先月、岡林信康さんの歌について書いたのですが、その後は高田渡さんばかり聴いておりました。

高田さんが亡くなられてからどれだけの年月が過ぎたのでしょうか。つい昨日のことのように思っていたのですが、調べてみたら15年以上も経っていました。あの訃報を聞いたときは、たいへんショックでした。あれからそんなに時間が過ぎていたのですね。

私の世代以上の多くの人には、高田さんの歌をどこかで聴いたことがあるのではないかと思います。

「自衛隊に入ろう」や「三億円強奪事件の唄」など、ユーモラスな響きのある歌は、岡林信康さんの「ガイコツの歌」などと同様に、テレビの電波に乗ることはなかったでしょうが、レコードやラジオでは聴くことができた曲です。

高田渡さんは、寡作のシンガーソングライターでした。たとえば、松任谷由実さんや中島みゆきさんのように、40代以降になっても次々とヒット曲を出すような、そういうシンガーソングライターではなかったと思います。

高田さんのレパートリーは、私の印象では、若い頃から最晩年までそんなに増えなかったように思います。しかし、歌や演奏はたえず進化していて、ギター一本の弾き語りでも、バックバンドを従えてのボーカルでも、年齢を重ねられるにつれて、芸術的な深みが増していったと感じています。

私や私の先輩にあたる年代の方々には、多くのファンがいらっしゃるのが高田さんです。

若い人からは、古き良き時代だからこそのシンガーだと、思う方もあるでしょう。高田さんが好きなのは単なるアナクロだという人もあるでしょう。

しかし、高田さんの歌は、時代を超えた普遍性があります。

高田さんの音楽は、諦観や反骨精神が特徴だと思います。諦観はあきらめることではありません。高田さんの反骨は単なる反政権・反権力ではありません。

高田さんは社会や人間のあり方を深く見つめ、それらを根本的なところから音楽として表現していたのです。時代に流されない孤高のフォーク歌手というべき人でした。

私たちは、高田渡さんの音楽を聴くことで、生きるなかで味わうつらさ・悲しさを追体験することができます。その追体験から、さまざまな不条理なことに負けない精神力を得ることができるように思います。

これは大げさすぎる言い方だとしても、彼の味わい深い声から絞り出される歌と、それを伴奏するギターやマンドリンなどの楽器の美しい音色から、私たちは生きる意欲を与えてもらえるでしょう。

私がもっとも好きな曲は、「生活の柄」です。高田さんの代表曲といえるでしょう。

「生活の柄」は、詩人 山之口獏(1903年-1963年)の同名の詩に曲をつけたものです。

私のもっている現代詩人文庫の『山之口獏詩集』に所載の原詩からちょっと変えてありますが、原詩の味わいを損ねるものではないと思います。

歌詞あるいは詩は、自分の経験や、誰か知っている人の生き方などを思い出して、それぞれが好きなように感じ取ればよいと思います。

私は、詩の中の「眠れない」というところに共鳴しています。

実際に私自身が寝つきが悪くて「眠れない」ということもあるのですが、比喩的にも「眠れない」ような精神状態にあります。

眠れないということは、マイナスの状況です。しかし、この歌は長調で、悲壮感なしに歌われています。これが高田渡さんらしいところだと思います。

野宿生活の男の生活も、悲惨さを強調しない高田さんらしい曲想によって、私は癒されています。

次の演奏は、ファーストアルバム『ごあいさつ』に収められているスタジオ録音盤です。

こちらは、ライブ演奏です。加川良、岩井宏とのトリオ演奏です。

初期の頃は、ゆっくりなテンポで歌われていました。後年は速いテンポで歌われるようになります。高田さんは、年齢を重ねるうちに、テンポを速くした方が、この曲に合うと思われたのでしょう。

たくさんのYouTubeのリンクを張りましたが、若き日々の演奏から最晩年の演奏まで、比較しながら味わっていただけたらと思います。

私の好きな演奏は、初期のアルバム『ごあいさつ』に収められている「生活の柄」です。

また、ライブ盤では、『岡林信康コンサート』に収められているのが、私のもっとも好きな演奏です。ハモり具合がたまらないのです。このライブ盤で高田さんを本格的に聴いてみたくなったほどです。このアルバムには、加川良さんの「教訓1」もあります。
残念ながら、現在は入手困難です。ネット上ではプレミア価格で売られているようです。
中古LPレコードならヤフオクで2000円くらい出せば入手できるようです。(もっと安い場合もあります。)レコード・プレーヤーをお持ちならば、レコードでの入手も一つの手かもしれません。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク