EL&Pの『タルカス』のさまざまな演奏が聴けて嬉しいです

アルマジロ イラスト(いらすとや)

アルマジロ (C)いらすとや

エマーソン・レイク・アンド・パーマー(EL&P)の組曲「タルカス」は、プログレッシブ・ロックの多くの作品の中でも特に愛聴している作品です。

私の場合、EL&Pは中高生の頃によく聴いていましたが、その頃はどちらかというと「タルカス」よりも「悪の教典#9」の方が好きではありました。

しかし、年を重ねるにつけ、「タルカス」の独特の雰囲気がしだいに好きになってきています。特に、最初の曲「噴火」にはオヤジ(若い人から見るとおじいさんですが)になった今でもしびれます。

EL&Pの「タルカス」について

架空の生き物タルカス(Tarkus)の名はキース・エマーソンが思いついた、辞書にはない彼の創作による名ということです。

LPや紙ジャケのCDでは見開きでタルカスを主人公とするイラストが、絵本のように描かれています。戦車とアルマジロが合体したようなタルカスは、自分の前に現れる敵を次々と倒していきます。アルマジロは可愛い動物なのですが、タルカスは怖いヤツです。

アルマジロ pixabay.com

アルマジロ pixabay.com

この無敵のタルカスも、古代からの伝説の生き物マンティコアには、そのサソリのような尻尾に目を刺されてしまい、海へ逃げていきます。しかし、タルカスは、これで終わりではないことを、最後の曲「アクアタルカス」が暗示しています。

マンティコア(いらすとや)

マンティコア(いらすとや)

「いらすとや」さんのマンティコアはちょっと可愛いですが、伝説では人肉を好む凶暴な恐ろしい生き物です。

ウィキペディアに掲載されている17世紀の画像には次のようなものがあります。

Manticore, or Martigora

The Manticore, or Martigora via Wikimedia Commons
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b6/Martigora_engraving.jpg

この図は、ヨハネス・ヨンストン『鳥獣虫魚図譜』(Historiae naturalis de quadrupedibus libri, cum aeneis figuris)に掲載されている図です。グーグル・ブックスで見ることができます。

https://books.google.co.jp/books?id=B4Y3iH4yDgoC&pg=PA86&hl=ja&source=gbs_toc_r&cad=4#v=onepage&q&f=false

(リンク先をスクロールして下の方へ移動すると同じ図が出てきます)

SFコミック的なジャケットイラストが、聴く者の想像力を刺激してくれるところも、アルバム『タルカス』の魅力でしょう。

「タルカス」には、歌詞のついた曲もあります。これはグレッグ・レイクが作詞し、彼自身がボーカルを担当している「ストーンズ・オブ・イヤーズ(stones of years)」「ミサ聖祭(mass)」「戦場(battlefield)」の3曲です。

これらの歌詞は、難解ではあります。しかも、ジャケットに描かれたタルカスの物語を直接に歌っているわけではありません。しかし、ジャケットイラストと歌詞の内容が一致しないところもまた、『タルカス』を聴く者の想像力を駆り立てます。この点も『タルカス』の魅力なのかもしれません。

LPレコード『タルカス』では、A面に組曲「タルカス」全曲が収められており、私自身一時期はこのA面ばかりに何回もレコードプレーヤの針を落としておりました。

技巧的な演奏が次々と展開していく迫力ある音楽は、発表から50年近く過ぎた今でも、色あせていないと感じます。これから後、50年、100年と過ぎても、古典的な曲として多くの人に愛聴されるのではないかと思っています。

ユーチューブで昔の演奏を楽しんでいます

2016年にキース・エマーソンとグレッグ・レイクが相次いで亡くなり、ファンとしてはたいへん寂しい思いをしておりました。

そんな思いの中で、昔の古いライブ演奏をユーチューブで見るようになりました。さすが、世界的に人気のあるアーティストであるだけに、今まで見たことのないライブ・ビデオも見ることができました。

キース・エマーソンに関しては、ナイス時代の貴重なライブ映像もあり、ナイスのファンでもある私には感動ものです。若いキース・エマーソンは、体も細く、神経質な若き芸術家の印象です。

しかし、背面カバーを取っ払って内部が丸出しのハモンド・オルガンを、ステージ上を移動させたり、傾けたり、鍵盤(の隙間)にナイフを刺したり、今の私たちの感覚ならメーカー保証外になるようなワイルドな使い方をしています。

また、跳び箱のようにオルガンを飛び越えたり、背面側からバッハの「トッカータとフーガ」を弾いたりするなど、ファンにとってはおなじみのステージ・アクションも見ることができます。オルガン本体をロック・バンドの主役として観客を惹きつける工夫している姿がよくわかります。さすがに、ステージでジミヘン(ジミー・ヘンドリックス)やリッチー・ブラックモアがギターを壊したように、キースがオルガンを壊すことはなかったでしょうが。

後のEL&Pでのよりいっそう派手なステージ・アクションも、このナイス時代からの積み重ねの結果なのですね。たとえば、空中でピアノを弾きながら回転するというような。

しかし、今の新品のハモンド・オルガンでは、いくら内部を触ろうが揺すろうが、機械式の音源を採用していたトーンホイール式のオルガンならではの、あの音が出せないのが少し残念な気もします。

「タルカス」の新しい演奏

ところで、「タルカス」に関して、ユーチューブを通じて、さまざまな演奏があることを知りました。詳しい人から、「お前、今頃何を言っているんだ」と言われるのは承知の上なのですが、カール・パーマーによるギタートリオでの演奏、オーケストラや弦楽四重奏での演奏、それから個人でのピアノやその他のキーボードでの演奏がいろいろあります。もちろん、これらの演奏は「タルカス」だけではありません。しかし、ここでは主に「タルカス」の演奏を取り上げたいと思います。

カール・パーマーの「CARL PALMER’S ELP LEGACY」

カール・パーマーの「CARL PALMER’S ELP LEGACY」は、ドラム、ベースとキーボードではなく、ギターによるトリオ演奏というのが驚きです。2001年から活動していたのですね。全く知りませんでした。

EL&Pの曲はキーボードトリオで演奏すべきだという意見もあるでしょう。ユーチューブには、キーボードでの演奏もアップされています。しかし、「CARL PALMER’S ELP LEGACY」としてアップされているものは大部分はギター・ベース・ドラムスでの演奏です。私は、この演奏を興味深く聴いています。ただ、ボーカルがほしいとは感じることはあるのですが。

CARL PALMER’S ELP LEGACYは『LIVE』という作品がCD+DVDで発売されています。

吉松隆氏編曲のオーケストラ版タルカス

また、吉松隆編曲、藤岡幸夫指揮、東京フィルハーモニー交響楽団演奏のオーケストラ曲の「タルカス」は、原曲にかなり忠実で、長年親しんできた者にとっては、そのままオーケストラの世界に入っていけます。

もし、私がこのコンサートの客であったら、体を揺さぶってリズムに合わせながら聴いてしまい、まわりのひんしゅくを買っていたでしょう。

この「タルカス」はCDでも発売されています。このジャケットはELPのジャケット・イラストのタルカスの模型をつくって、それを写真で撮影したものが使われています。

この模型をもって写っているキース・エマーソンの写真などが、音楽プロデューサー岡野博行氏のサイトに載っています。(http://okanonet.com/2013/03/yoshimatsu_keith/

私としては、こんな演奏を聴けただけでも、嬉しい限りです。このコンサートには、キース・エマーソンもいて、アンコールにはステージに登場されたとのことが、ユーチューブのコメント欄にあります。この場にいることができた方々は、本当にうらやましいです。

モルゴーア・クァルテット

キース・エマーソンの急逝後、『トリビュートロジー』という、EL&Pの『トリロジー』によく似たジャケット・イラストのアルバムを2017年にリリースされた弦楽四重奏団があります。

それは、モルゴーア・クァルテット (荒井英治:第1ヴァイオリン、戸澤哲夫:第2ヴァイオリン、小野富士:ヴィオラ、藤森亮一:チェロ)です。

これも、何を今更と、多くのファンの方々からは、私の情報弱者ぶりにあきれられそうです。

私は、まだこのアルバムは聴いておりません。しかし、ユーチューブには、モルゴーア・クァルテットによるプログレの名曲の演奏がアップされています。

たとえば、キング・クリムゾンの「レッド」は、プログレ・ファンには、「うーん」とうならせるような響きがあります。

キング・クリムゾンのファンの方の中には、「俺は弦楽四重奏では聴きたくない」という人もあるかもしれません。しかし、クリムゾンもクラシックも大好きな私は、このような演奏もたいへん興味深く聴けます。

ほかにも、「21世紀の精神異常者」、ピンク・フロイドの「原子心母」、『狂気』所収の「タイム」、イエスの「同志」、EL&Pの「悪の教典♯9・第一印象・パート1」もユーチューブで見ることができます。

レイチェル・フラワーズさん

「タルカス」に話を戻しますと、ピアノ独奏による演奏や、電子オルガンなど様々な演奏がユーチューブにアップされています。どれも、たいへんすばらしいですね。今では、1970年代のような大がかりな機材なしでも、オルガン、アコースティック・ピアノ、エレクトリック・ピアノ、シンセサイザーのサウンドが再現できるようです。

その中でも、この人はいいなと思ったのは、レイチェル・フラワーズさんでしょうか。次の演奏は、アップされたのが6年前で彼女はまだまだ幼さを感じさせる年齢ですが、彼女の才能を感じることができる演奏です。キース・エマーソンのモーグ・シンセサイザーを使っています。

こちらは、ステージでのピアノ演奏です。より成長した彼女の演奏を聴くことができます。

彼女のピアノや電子オルガンでの演奏には、キース・エマーソンの作品がナイス時代もEL&P時代もたくさんの作品がアップされています。まだ視聴されたことのない方は、彼女の演奏をぜひユーチューブでご覧ください。

彼女のCDも発売されています。これは、「タルカス」などのEL&P作品ではなく、彼女のオリジナル作品です。プログレよりもフュージョンの傾向が強い作品です。アルバムのダイジェスト版がユーチューブにあります。

まとめ

EL&Pについては好き嫌いがあるでしょうし、EL&P好きな人の中でも「タルカス」についての賛否は別れるかもしれません。

私の場合は、「タルカス」の次々とテンポよく展開していく構成と、独特のメロディーや和音の響きが好きでこのごろ頻繁に聴いているという具合です。

ユーチューブのおかげで、EL&Pの演奏だけでなく、他の人による演奏、他の楽器編成での演奏を知りました。それぞれの演奏は、EL&Pの演奏とはまた違う特徴があって、私には興味深く聴くことができました。

その道に詳しい方には目新しいことがない話かとは思いますが、そうでない方は、1度聴いてみてください。もしかすると、好きになられるかもしれません。

参考までに、以下に入手可能なCD等も挙げておきます。

「タルカス」ではないですが、レイチェル・フラワーズさんのCDもあります。

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